一般に、オーバーホール(Overhaul)とは『機械製品を部品単位まで分解して、清掃・再組み立てを行い、新品時の性能状態に戻すこと』を指します。


時計におけるオーバーホール(Overhaul)とは、以下の2種類の意味があります。
1:「動かない」「時間があわない」「すぐに止まる」といった理由でお客様からお預かりした時計を部品単位まで分解し、故障原因を探し、修理・交換・調整を行い、専用の潤滑油を注油しながら再度組み立てを行い、正常な状態にしてお返しすること。
2:正常に動いていたとしても3年〜4年周期で定期的に行なうことによって、劣化を防ぎ、故障原因個所の早期発見により時計の寿命を延ばすこと。


ここで、ポイントなのが3年〜4年という数字です。
実際にこの周期で定期的にオーバーホール(Overhaul)をされているお客様はほとんどいません。多くのお客様が何か不具合が出てから修理に持ち込まれます。
しかし、ウォッチレスキューでは出来ることなら3年〜4年という周期でオーバーホール(Overhaul)を行っていただきたいと考えます。その理由として「パッキンの劣化」と「専用油の寿命」があります。

◇パッキンの劣化
時計に使用されているパッキンとは、塵やほこり・水分を防ぐために時計本体の裏蓋やリューズ等に使われているリング状のゴム製パーツです。素材がゴムである以上、日々徐々に劣化していきます。時計の使用環境や頻度にもよりますが、劣化が進めば、塵やほこり・水分を防ぐことが困難となり、時計内部に侵入し、ムーブメント(機械)に悪影響を及ぼします。


◇専用油の寿命
非常に精密な部品が組み合わさって出来ている時計のムーブメント(機械)には、大小様々な摩擦が生じています。時計が動いている限り、その駆動箇所の摩擦は無くなることはありません。その摩擦を可能な限り軽減する為に、時計には高価な専用の潤滑油が注油されています。よく「油切れ」と言いますが、それは経年の使用によりこの潤滑油が乾いたり、内部のほこり等によって汚れた潤滑油が時計を正常に動かすことが出来ない状態を言います。
例えて言うと、酸化した油は人間の健康に悪影響をおよぼしますよね。時計も同じです。
極論を言えば、摩擦がゼロなムーブメント(機械)が誕生すればオーバーホールは必要なくなります。摩擦がゼロに出来るよう各時計メーカーは日々努力していますが、現在はまだ誕生していません。この高価な専用の潤滑油に関しても長期間の摩擦に耐えうるよう考えて精油された化学油ですが、やはり3年〜4年で劣化してしまいます。


定期的なメンテナンスを行っていた時計とそうでない時計は明らかに違います。20年、30年経た姿には明らかに差が生まれます。
また、何か不具合があった後の修理では部品交換代などが加算され割高になりがちです。大切な時計・思い出の時計であればあるほど、定期的なメンテナンスをお勧めいたします。

ここまでは機械式の時計に関して触れてきましたが、クォーツ(電池式)時計に関してもオーバーホール(Overhaul)は必要となります。
クォーツ(電池式)時計も水晶振動子を制御するIC回路部以外の駆動部は歯車等を使用し、小さいながら摩擦が生じています。摩擦が生じている以上、そこには潤滑油が注油されています。また塵やほこり・水分を防ぐためにパッキンも使われているのです。


『消費電流値』という言葉があります。電池をいかに効率よく使用しているかを確認する数値のことです。その数値が基準(機械の種類によって基準値が設けられています。)より高ければオーバーホールをお勧めします。この数値が高いとせっかく電池交換をしたにもかかわらず数ヶ月で止まってしまうことになります。
機械式と同じように3年〜4年とまでは言いませんが、やはり定期的な周期でのメンテナンスをお勧めいたします。ちなみにデジタルウォッチは摩擦部が存在しないので必要としません。


時計のオーバーホール(Overhaul)は時計の専門技術と知識をもった職人(ウォッチメーカー)でなければ困難です。髪の毛よりも細い芯を持った部品も存在し、緻密で繊細な作業が問われます。以下ではその工程をご紹介します。

1:診断
外装の状態/機能確認/精度確認


機能確認/外装確認 オーバーホール前の精度

2:分解
ケースの分解/ムーブメント(機械)の分解/磨耗及び不良箇所の確認


文字盤を外した状態 ムーブメント・文字盤・針 テンプを外す

3:洗浄
ケースその他パーツの洗浄/分解した機械を部品ごとに洗浄

洗浄前 各パーツごとに籠に入れる 各パーツの特徴を踏まえ分ける  3層式洗浄機

4:組立
磨耗及び不良部品の交換/注油/調整


専用油の注油作業 組立・注油・調整を完了

5:ケーシング
文字盤と針の取付け/ケースへの組込み


針の取り付け ケーシング

6:検査
外装及び機能/精度・ランニング実測テスト/防水テスト

オーバーホール後の精度 防水検査 ランニングテスト